生命はつづいていく
小学生の頃、体操マットにくるまって遊んでいる時に窒息しかけたことがあります。その際に『そもそも空気って誰が作っているのだろう?』と疑問に思うようになり、それが植物の光合成によって生み出されていることを知りました。その後、人類を含め地球上のほとんど全ての生物が、光合成から生まれる空気と有機物をもとにして生きていることを学び、光合成こそが生命の根源だと考えるようになりました。
その思いは変わらぬまま月日が経ち、光合成の研究で学位を取ったのですが、科学的に深く把握しようとすればするほど生命の本質から離れていくようなもどかしさを覚えるようになりました。そこで一度研究から距離を置き、もっと大きな枠の中で光合成を捉える旅に出てみました。
植物に関わることを軸に農業、畜産、ワインの醸造、ログハウスづくり、宮大工、自給自足の家族を回る放浪生活・・と色々試してみた結果たどり着いたのが『生命はつながりの中に宿る』という思想でした。光合成というのはあくまでも「点」の反応で、ここを起点につながっていく流れの方に生命の本体があるという考え方です。
個別では「点」である反応もつながれば「線」になり、線がつながれば「円」になって循環します。生命を見た時にも土から植物が生まれ、植物は動物に食べられ、動物は死んで土に戻る、という循環があります。これら一つ一つを個別の現象として捉えるのではなく、この循環を流れるエネルギーそのものを一つのつながった生命体として捉えるということです。細かく分ければ物質でも、それらがつながることで生命が宿る。生命の本体は「モノ」ではなく「つながり」側にあるのでは?と気づいた時は結構な衝撃でした。
多様な価値観が存在するようになり、何が正しいのかわからなくなる現代ですが、私たちが循環という「つながり」の中で存在している事実は変わっていません。そんな世の中で、海洋深層水という地球規模でめぐる循環を活かしながら持続的な社会システムをつくろうとする久米島の挑戦は、生命の本質と軌を一とする正しい取り組みだと私は信じています。そんな久米島の取り組みを本サイトで紹介し、一人でも多くの方々に知っていただければ嬉しく思います。
株式会社ロート・F・沖縄 代表取締役 中原 剣
博士(バイオサイエンス)